映画■ボーンコレクター(00.04.16)

夕方までごろごろし、また四川ラーメンで焼豚まんまを食し、梅田までぶらぶら歩いて映画を観る。なんと怠惰な日曜。
デンゼル・ワシントン主演の映画が同じ映画館で昨日同時に公開されたようで、どっちにしようか迷いまくる。

『マーシャルロー』は、あいつぐテロ活動にニューヨークが戒厳令下におかれ、軍が戦車が街に溢れるという非日常を描いたポリティカルフィクション。予告編に「この状況を作ること自体が目的なんだ!」というようなセリフがはさまり、「むむ。こりゃあ、パトレイバー2と同じテーマか!?」と思ってしまった。押井守監督の「起動警察パトレイバー2」はアニメとは思えぬというか、そこらの実写ドラマなど足元にも及ばぬ硬派なテーマと設定で、自衛隊が東京の街を席巻する有事をシミュレーションした『状況映画』であった。この映画の黒幕は、クーデターをおこそうとしたわけではなく、首都が戒厳令下におかれるという状況を演出すること自体が目的であったのだが、「マーシャルロー」でもそのテーマが描かれるのか?が非常に興味あるところなのだ。
この映画、ずいぶんお蔵に入ってたようで、劇場も小さい。大スターが出てるわりにね。
やはり『人間ドラマ』じゃなきゃ地味なんでしょうね。こないだウルトラマンティガの話のときにも書いたように、『状況映画』は描かれにくくなっているのかも。キャラクターを描くドラマじゃなきゃだめなんだな。怪獣映画さえ、『状況映画』ではなく、『キャラクタードラマ』にせずにはいられないのが現状なのか。
『タイタニック』がヒットしたのは、状況映画になるはずのタイタニック沈没を、デカプリオを使ってロミオとジュリエットの物語であるかのように見せかけた営業上の頭のよさにあるのだろう。キャメロンはそのへんがうまい。

実際に観たのはもうひとつの『ボーンコレクター』だったのに、わき道のほうが長くなりそうな勢いだなぁ。僕としては、『状況映画』応援のために『マーシャルロー』を観なければとも思ったのだが、結局ボーンコレクターを観ることにした。
昨年訳出された原作の噂を聞いていたので、観ずにはいられなかったのだ。一応ミステリファンだしねぇ。
もはやひとつのジャンルになっているシリアルキラーもの。残虐な殺人を重ねる犯人を追うのは、事故で肩から上と指一本しか動かせなくなった天才鑑識官と、その手足となる女性パトロール警官。このコンビは、明らかに「羊たちの沈黙」のレクターとクラリスを思わせるし、意識もしているのだろうが、なかなか魅力的な設定である。というか、このキャラクター造形なしでは、この映画の魅力はなかったであろう。犯人のたくらみVS名探偵の頭脳という図式なら犯罪『状況映画』になりうるが、これは操作側のキャラクターを描いた『人間ドラマ』なのだから。
その意味で、寝たきり捜査官ワシントンも女性警官アンジェリーナ・ジョリーも充分魅力的であったといえる。原作はどうなのだろう。どこに視点がおかれているのだろう。事件を分析する面白さに、もっと筆は費やされているのだろうか。最近海外ミステリから離れてしまっている僕だが少し気になりはじめている。

『羊たちの沈黙』といえば、続編『ハンニバル』が出版されたが、解説によると映画化は監督がリドリースコットだとか。僕は『羊たち〜』が特に好きなわけじゃないけれど、この人が監督するんじゃ観ないわけにはいかないよね・・・。