映画■『ジャガーノート』爆弾から伸びた赤と青のコード(99/4/4-01:06:04)

●あと数分で爆発する爆弾。信管から伸びた赤と青のコード。二本のうち一本を切れば爆破阻止。もう一本を切ればドカン。こんなシチュエーションをいろんなドラマで数限りなく見てきた。そのルーツがこの映画だ。

●1975年、「大空港」や「ポセイドンアドベンチャー」が火をつけたパニック映画ブームの中でこれは公開された。豪華客船に仕掛けられた7つのドラム缶型爆弾。荒天で乗客の脱出は不可能。海軍爆弾解体チームが送り込まれ、爆弾解体がはじまる、といった内容。爆弾解体チームのチーフファロンにリチャード・ハリス。船長にオマー・シャリフ。アンソニー・ホプキンスも出ている。船内ではグランドホテル形式の人間模様も描かれ、当時のパニック映画らしいオールスターキャストの大作っぽい仕立てにしてあるが、実はニッパー片手に爆弾をじりじりと解体していく地味だが神経をささくれ立たせるタイプのサスペンスである。爆弾は犯人が解体者へ向けてさまざまな仕掛けと罠を張ってあり、まさしく盤面をはさんだゲームの匂いがする。僕好みの作品なのだ。で、今日中古ビデオショップで見かけたので買って帰った。

●で、この映画のクライマックスが信管から延びた赤と青のコードのどちらを切るかというシチュエーションなのである。このパターンあまりにいろんな漫画やドラマに使われすぎていて、もはや何が原典か知らずに使われていることもあるんじゃなかろーか。まあ、細かい事例はおくとして、明らかにこの映画の影響をうけたものをあげてみる。

●パトレイバーのビデオ第一シリーズで、車に仕掛けられていた爆弾。これは明らかにジャガーノートのパロディで、爆弾の中から見た視点や内部でまわっているパンチ穴のあいたテープなどそっくりそのまま。もちろん最後の仕上げは赤青コードだ。

●古畑任三郎の第二シリーズ。キムタクが犯人役の回。これもモロに赤青コード問題で、しかも犯人にどちらを切ればいいかを問い、その答えを信じるか信じないかというところまで完全にジャガーノートと同じである。まあ映画の犯人役は、キムタクと違ってしょぼくれたおっちゃんだったけどね。

●そして隠れた名作「エクゼクティブデジション」。この映画、さまざまなシーンで過去のパニック映画へのオマージュを捧げていてファンをにやりとさせてくれる。特に爆弾解体のシーケンスは、途中でおどかすためのベルが鳴ったり、テープがまわってたり、絶縁体チップをすき間にはさんだりとジャガーノートを思わせるディテールがいっぱい。でも、単なる手抜きのためのぱくりではなく、現代風のハイテク爆弾にあわせておいての、制作者の目くばせであるところがさすがだ。そして爆弾解体途中のどんでん返しも、ジャガーノートからの引用といえよう。爆弾の仕掛けられた乗り物に特殊部隊が乗りこんでくるところもジャガーノートっぽいよね。

●この映画を見た僕は、ボール紙を丸めて、ドラム缶爆弾の模型を作った覚えがある。中身に壊れた時計の部品なんかしこんだりして。そのころは模型趣味なんて持っていなかったのだが、やっぱり作ることは好きだったんだろうなぁ。あと、電話タイマーに仕掛けを施した「爆弾解体ゲーム」ってのも。

●ちなみにジャガーノートとは豹柄の帳面のことではない。べたですいません。犯人が自分のことをそう呼ぶのだが、たしかインドの破壊神だっけか。

●まあ、多作品に影響を与えながらもそれほどメジャーじゃないこの作品、なかなかの佳作なので、レンタルビデオ屋で見かけたらぜひ一度手にとっていただきたい。

『ジャガーノート』(1997)
監督 リチャード・レスター (ワーナーホームビデオよりビデオ発売)